過去、いくつかのエントリーでLT値、AT値といった「閾値」について言及してきました。


関連エントリー:

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各種「閾値」に関する用語は定義が曖昧なため、使う人によって意味するところが異なっており、調べれば調べるほど玉石混淆の色々な情報がでてきて混乱してしまいます。よってこのエントリーでは、諸々調べた結果をまとめ、このブログで使用する用語の定義を改めて明確にしていきたいと思います。

閾値の種類

AeT (Aerobic Threshold / 有酸素性作業閾値)

有酸素性エネルギー経路が中心ではあるが、無酸素性エネルギー経路が動き始めるポイント。概念的なもののようでもあるが、血中乳酸値が 2mmol/ℓ に到達するポイントとしている研究もあるようなので、ここではそのように扱う。

AnT (Anaerobic Threshold / 無酸素性作業閾値)

有酸素運動から無酸素運動に切り替わる転換点。あくまでも概念であり、具体的な数値指標ではない。一方、呼気中の二酸化炭素排出量で計測してAnTとしたものをVT(Ventilation Threshold /換気性作業閾値)という。マラソントレーニングにおける用語としてVTが使われるケースはあまり見かけないので、ここではAnTとほぼ同義として扱う。

LT (Lactate Threshold / 乳酸性作業閾値)

有酸素運動から無酸素運動に切り替わる転換点を血中乳酸値(糖質をエネルギー源とする無酸素運動の代謝物)で計測したもの。血中乳酸値が「急激に上昇する」ポイントという定性的なものであり具体的な数値指標ではない。それ故、OBLAと同義で使われている場合もあれば、AeTと同義で使われている場合もあり、注意が必要。ここではOBLAと同義として扱う。

OBLA (Onset of Blood Lactate Accumulation / 血中乳酸蓄積開始点)

乳酸が血液中に急激に貯まり始めるポイント。血中乳酸血が4mmol/Lに達するポイントとして数値化されている。LT, AnTと同義で使われる場合もあり、ここではざっくりとLT≒AnT≒OBLAとして扱う。ジャック・ダニエルズコーチの「Tペース」もこのレベルとして考えます。

図でまとめてみる

これらを図でまとめてみるとこんな感じです。

閾値

ついでに、関連する心拍数、エネルギー源、動員される筋繊維の種類も併せてまとめてみました。なお、心拍数についてはジャック・ダニエルズ方式としています。

こうしてまとめてみると少しは頭が整理されてイメージしやすくなったでしょうか。今後のトレーニングにあたっての参考にしていきたいと思います。

参考:無酸素性代謝閾値 / AT – e-ヘルスネット, 換気性作業閾値 / VT – e-ヘルスネット, 乳酸性閾値 – Wikipediaこれからはじめる乳酸値 – Training Journal December 2009